「学校で働かせてもらえるって、事務さんとか?」
データ入力なら一通り出来るし、電話応対も確かに慣れて身についている。
悪くなくても頭を下げたりムカついても笑顔を見せるという術は散々取得してきたから、いわゆるモンスターペアレントの初期対応も多分出来る。
けど、そんな名門校に事務とはいえ一般生徒の紹介で簡単に入れるものなんだろうか?
よっぽど人手が足りないのかなと疑問を口にすれば、環くんがお茶と共に差し出したクッキーを食べながら首を振った。
「あーごめん、言い方悪かったかも。正確には学校って言うか、俺が住んでる寮の仕事なんだ。管理人とまではいかないけど、ご飯作ったり、掃除したり、ユニフォームの洗濯したり」
「・・・それってつまり」
「寮母さん!」
おっと、予想の斜め上まで行っちゃったな。
「前にいた寮母さんが定年で辞めちゃってさ。とりあえず今は皆で分担してんだけど、もー大変なんだよ!
部活でくったくたになったあとに飯なんか作る体力ないし、でも腹は減るじゃん」
驚いて次の言葉が出てこないあたしを気にしてないのか、環くんが一気にまくしたて頬杖をついてため息を漏らす。
その表情には確かに切羽詰まった悲壮感が溢れている。
助けに名乗り出たい気持ちはやまやまだけど、寮母さんかあ。