ご飯は皆が揃ったら。




これはベッドに腰かけながらする話ではないと踏み、環くんをキッチンに連れ出した。

興味津々な様子でついてきたお母さんをドアで遮断し、お茶を出してから彼の正面へと向かう。
テーブルの上に乗せた腕が若干震えている。
今から彼の切り出す話が、あたしの今後を左右するかもしれないとわかっているから。

「俺がどこ行ってるか知ってたっけ?」
「もちろん。篠生《しのお》大付属でしょ」

頷く環くんの軽いドヤ顔も無理はない。
この子が身を置いているのはこの辺りじゃ最も評判が良く、倍率も高い高校だ。

専門的な育成に力を入れているようで、体育科や美術科、果ては農業までと総合大学並みに幅広く学べる・・・
って、もともとあった篠生大学の付属校として設立されたというから、それなりの科があるのは当然なんだけども。

そしてリトルリーグから野球を続けている環くんは、この争奪戦の激しい人気校に推薦で入ったという強者である。

「環くんすごいとこ行ったんだよって、うちでも話題になったし」

・・・などと当たり前を装って答えたが、実はお母さんからの横流しで得た知識。
2年前の情報を咄嗟に思い出せた自分にホッとしつつ、この才能あるイトコを見つめる。
「俺んちも塔子姉がチーフになった時、すげえって湧いたよ」

ちょいちょい人の傷口突いてくるなぁ。
無意識?わざと?
無邪気な笑顔からは窺えず、あたしも曖昧に濁すしかない。