──ゴオォォッッ!!!






目を開けていられないほどの強風が吹き付けたと思うと同時に、感じていた肌を突き刺すようなピリピリが消えた。



一瞬で辺りが静かになっていく。





...何が、起こったの?





恐る恐る目を開くと。



あたしの目の前に、男の子が立っていた。




黒くて長めの髪は、強風のせいかオールバックになっていて。


小さい顔、筋の通った鼻、綺麗な形の唇。


ゼンが王子なら、この人はまるで、絵に描いた騎士のようだ。


それくらい意志が強そうな感じを受ける。



...綺麗。



本当にそう思わせるような顔立ちだった。



切れ長で鋭い瞳が、観客席に向けられている。



この人、あたしを助けてくれた...?




「あ、あのっ...」


「なに」


「助けてくれた...んですよね?
本当にありがとうございました!!」


「...別にいいけど。
それより、魔法も使えない奴が危険な真似をするな」


「あ、はい...。すいません...」




...って、え?


何でこの人、あたしが魔法使えないって知ってるの?



あたしってそんなに有名...?



首を傾げるあたしの後ろから、ゼンが走ってきた。




「リリー、大丈夫か!?」


「あ、うん...。この人が助けてくれて」


「マジか、良かった!!
リクはリリーの命の恩人だな!!」




...へ?


今、リクって言った?




「あ、リク!!今までどこにいたの?」


「観客席でサボってた」


「リク。テストなんだから真面目にしなよ」




やってきたライトとイアンも普通に会話をしている。