そう思って目をつぶった瞬間、受け身の体勢をとろうと構えていたあたしの身体に何かが絡みつき、勢いが止まった。


目を開けて見ると、道の脇に生えている木の枝が伸びて、あたしの胴体を支えていた。


そのおかげで転ばずに済んだみたい...。




「リリー、大丈夫?」




柔らかく、明るい声。


そしてあたしをこう呼ぶのは1人しかいない。




「ゼン...?」


「おはよー。
お、良かった良かった。危機一髪だったね」


「これ、ゼンがやったの?」


「そうだよ。
リリーが転びそうなのが見えたから、この木に頼んで助けてもらったんだ。
...ありがとう、もう戻って大丈夫だよ」




ゼンがそう言うと、あたしに巻きついていた枝が離れて元に戻っていく。


すごい。


彼はどうやら植物と意思疎通しているみたい。



魔法を使いこなすと、話せるようになるのかな。