「……あの、どうして俺をヘルプに指名してくれたんですか?」


 私は思い切って聞いてみた。不躾だとは思ったが、五分だけという約束だ、時間が無い。

 青葉はちょっと嫌な顔をしたが、マダムは優しい笑顔でグラスをテーブルに置いた。


「ふふふ……どうしてかしらね?」

「え……?」


 全然答えになっていない。だけど、マダムの醸し出す優しい雰囲気に呑まれそうになる。


「貴方は、何か悩んでいるの? そんな顔をしてるわね」


 マダムは私と真っ直ぐ向き合う様に座りなおすと、そっと私の手を握った。


 悩み……

 悩みというより、不安だ。ヒロに勝てなければこの店を閉店しなければいけない。みんなの夢の城なのに、私はそのオーナーなのに、何も出来ないのが悔しくて悲しいんだ。

 俯いた私に、マダムは握った手にぎゅっと力を込めた。


「大丈夫よ。自分が思っているより、ずっとずっと貴方は強いわ。だって、同じ目をしているもの。だから、大丈夫」

「同じ……? 誰と同じ何でなんですか?」


 同じ目? マダムの言う事は、全然意味が分からなかった。一体誰と同じなのか、それを聞いたけどマダムはにこにこしているだけで答える気は無いみたいだ。