だって、こんなカッコいい彼が、何の取り柄も無い私を彼女にしてくれたんだ。少しぐらいの女遊びに目を瞑るぐらい、なんて事無い。きっと最後は私の所へ帰ってきてくれる、そう思うようにしていた。


 でも……今度の浮気は我慢が出来なかった。


「……その女の人って、真由美、だよね?」


 彼はよりによって、同期で私の親友の真由美に手を出したのだ。

 私の言葉に彼は口元に緩やかな弧を描く。そして何も答えないまま煙草を灰皿で揉み消すと、その横に置いてあった缶コーヒーを片手でカツンと空けた。


「だったら、何?」


 缶コーヒーを飲みながら、彼はさして深刻な事ではないように答えた。


 ……ああもう、ダメだ。


 私の知らない所で知らない人と浮気するなら、まだ何とか我慢が出来た。寛大な気持ちで知らないふりだって出来ると思う。

 だけど……


「……今まで、ずっと我慢してきたよ。受付の人と浮気してたのも、隠れて合コン行って女子大生お持ち帰りしたのも知ってる。だけど、私は何も言わなかった。でも……今回はルール違反だよ……」


 真由美は知らない人じゃない。彼と私の同期だし、何度も三人で遊んだ。それなのに浮気相手にするなんて、それはもう完全なルール違反だ。