「それじゃあ、気をつけて帰れー」




帰りのHRも終り、いつも通り図書室に向かおうと鞄に荷物を詰める。



「ねぇ彼方。最近いつも何処いるわけ??」



「そうそう、茜達いっつも探してるんだよ??」



「……内緒」



夜木君は、シーッと人差し指を唇に当てる。その光景を見ていると、目が合った彼は、一瞬申し訳なさそうに笑った。



深い意味までは読み取れず、今日は来ないのかなー……なんて思いながら教室を出る。



教室では、大きな声でまだ女子たちが話していた。



「でもかわいそー!!彼方の隣の席って透明人間なんでしょ??」



ズキッと胸が痛んだ。透明人間と呼ばれてる影の薄い女子が隣の席でかわいそう。世の中はそう感じるんだ。



ズキズキと胸が痛むのは何故だろうね……。最初から分かってたはずなのに。



夜木君が優しいだけ。世の中から見れば、無口で無表情で影の薄い私は、とても魅力がない。



それに比べて夜木君は太陽みたいな人で、優しくて人気者で、話せるのも奇跡なほど正反対の人。



いや、分かってはいましたけどね。うん……なんで泣きそうなんだろうね。