あんずジャム

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「優羽ちゃん料理得意なの?このクッキーすっごく美味しいんだけど」


「お口に合って良かったです。良かったら作り方教えましょうか。」



ゆきねの部屋で、昨夜と同じような光景が繰り広げられていた。

違うのは、作った人と食べている人とが逆転したことくらいだろうか。



「玲也にも少し休憩するよう言ってくるわね」


「え、悪いですよ」


「いいの。どうせ十分後には休憩に入るんだから、多少早くなっても大丈夫よ」



そう言うゆきねについて、優羽も店におりる。(店に通じる階段は内側にもあった)


数人客がいるようだが、休日は人手が多いので、玲也が抜けても大丈夫そうだと、スタッフルームから店をのぞいたゆきねは言い、優羽の背中をトンと押す。


何人かの店員が、何事かとこちらを見ていたが、なるべく気にしないように玲也がいる方へ歩く。

そして、優羽はテーブルを拭いている玲也に、後ろから声をかけた。




「あの、神田さん」


「……え、優羽ちゃん?…あ、いらっしゃいませ」



玲也は優羽がいたことに気がつかなかったらしく、振り返って驚いた声をあげた。