「今思えば、その心残りがあったっていうのも、結婚しなかった原因なのかなー?
…なんて、結婚しなかったのは仕事に夢中になりすぎたからなんだけど。
……まあ要するに、何を言いたいのかっていうと」
ゆきねは、優羽の額を指でピンと弾く。
顔を見ると、にっこりと魅力的な笑顔が彼女に戻っていた。
「『好き』って言えなかっただけで、こんなに引きずってる奴もいるんだから、言わずに後悔するより、言ってから後悔した方が良い場合もあるかも!ってね」
ゆきねの言葉は、優羽の心にズシリとのしかかった。
(そっか…私は、どうせ受け入れてもらえないだろうから、って傷つくのを恐れて…)
軽く目を瞑り、服の裾をギュッとにぎる。
(おかしいな…自分の気持ちを知ってもらえることの喜びを知ったはずなのに…
…私、言えなかったことで後悔したくない!)
パッと目を開き、ゆきねに言う。
「ありがとうございます、ゆきねさん。
私、後悔するなら、自分の気持ちを伝えてから後悔したいです」



