「彼は穏やかな人柄だったし、付き合い始めたのは告白されたからで、別に好きなわけじゃなかったんだけど、時間を一緒に過ごすうちに、私の方もどんどん好きになっていった。」
交際は順調だった、とゆきねは言う。
「けどね、終わりは突然だった。」
ゆきねは、もう随分暗くなった窓の外を見た。
街の明かりがキラキラ輝いている。
「付き合って二年くらい経った時、彼は交通事故に巻き込まれて…亡くなった」
「えっ…」
「泣いたわよ、身体中の水分が全部抜けちゃうんじゃないかってくらい泣いた」
ごくりと唾を飲み込む。
ゆきねはものすごく寂しそうに見えた。
「しばらくは何をする気力も起きなかった。ぼんやり部屋で外を眺めてた。それから気づいた。…私、彼に好きだって言ったことなかったの」
向こうはしつこいくらい言ってくれたんだけどね。照れくさくて、そっかーって流しちゃったんだよね…と笑った。



