店に戻ると、案の定篤にグチグチと文句を言われた。


お詫びとして、玲也は閉店後の掃除を一人で引き受けることにした。



「じゃー頼んだぞ」


「うん。お疲れ様」



他の店員達も帰って、フロアの中は玲也一人になった。


一人で掃除を引き受けたのは、もちろん途中でいきなり抜けたことへのお詫びでもあったが、何より一人になりたかったのだった。


玲也はモップをかけながらフッとため息をつく。

そして立ち止まり、自分の手をじっと見つめる。



(俺は…何をしようとした?)



公園で、優羽と話した時。

あの男子生徒は優羽にとって恋人でも好きな人でもないと聞き、ものすごく安心した。


その安心と同時に、今、手を伸ばせば彼女に触れることができる距離にいるな、と思った。

それで無意識に彼女の方へ手を伸ばしていた。


彼女の頬に触れそうになる直前、ようやく我に返った。