そう、例えば、文化祭で優羽と親しげに話していた茶髪の男子生徒のこと。ただの親しい先輩か、それとももっと特別な関係なのか。


玲也と優羽との関係が、ただの店員と客である以上、そんなことを知ることができるはずもない。



──と、あの文化祭以降、何かの拍子に何度もそんな思考に陥ってしまうため、無駄に明るく振る舞おうとしていたのだ。



(よし、とりあえず今は目の前の仕事に集中だ!)



そう自分に言い聞かせた時、先ほどの受験生たちの方から会話が聞こえてきた。



「そういえばさ、あたし見たんだ。ついさっき、坂井誠が人少なそうな公園に女の子連れ込んでいったの」


「坂井って…確か、D組の女癖悪いって有名な…」


「そうそう。何人も泣かされてるらしいし…顔は格好いいから、騙される子も多いみたい」


「うわー…で、今回の被害者はどんな子なの?」


「確か同じ文化祭実行委員の二年生の子。あたしも委員だったからさ、何回か見たんだ。
…地味な感じだったけど、顔はけっこうかわいかったし…たぶん坂井の好みだろうな」




文化祭実行委員、という言葉にドキリとする。

地味な感じだけどかわいい…どうも嫌な予感がした。


玲也は彼女たちの会話にさらに意識を集中させる。