二人が、はたから聞いていればずいぶん中身のない会話をしていると、扉が開いた。



「いらっしゃいませ──」


「あ、噂をすれば」



入ってきた優羽を見て、玲也は言葉を失う。

篤が言っていた通り、彼女は前髪を切って、今までより明るい雰囲気になり──



(ちょっ…待て待て…これは──かわいすぎじゃないか?)



玲也は内心かなり荒れるが、悟られないように笑顔をつくる。



「いや、いきなり嬉しそうになったし…分かりやすいな本当…」



篤には思いきり悟られているが、とりあえず無視。


優羽を席まで案内して、玲也は我慢できず話しかける。



「なんか、お久し振りですね」



しかし、優羽が驚いた顔を見て少し後悔する。

すぐさま会釈して立ち去ろうと思った時、優羽が口を開いた。



「はい、もうすぐ学校の文化祭で…私、文化祭実行委員なので土日とかも忙しくて。
今日はやっと時間ができたので…」



文化祭実行委員という役職には、玲也にも覚えがあった。

玲也の出身校、つまり優羽の学校は文化祭は三日あり、初日は体育館での出し物がメインで外部への公開はなし。
残り二日で一般に公開する模擬店などのクラス企画がある。

文化祭実行委員の仕事は主に一般公開の日に向けたものだったはずだ。