だから、今玲也があの子に抱いている感情には、自分でもひどく戸惑っている。

3ヶ月ほど前からよく店に来るようになった彼女。

うつむいていることが多いが、時折見せる笑顔はすごく可愛くて…


今日は来るだろうか、明日は…?

ドアが開く音がするたびに、彼女ではないかと期待してしまう。


実際にドアの向こうにいたのが彼女だった時は胸の高鳴りが最高潮となる。

しかしいざ彼女を目の前にすると、結局マニュアル通りの台詞をしゃべるのが精一杯で…


これが玲也にとって「初恋」だと言っても差し支えないだろう。




そんな玲也は周りの人間から見ると意外らしい。



「俺はてっきり玲也は昔から女の子とっかえひっかえしてると思ってた」


「私もー。こんなけイケメンなら女の子達が放っとくわけないもんねぇ」


「…人聞き悪い」



玲也はため息をつき、好き勝手言っている篤と店長に反論する。

この【Cafe:snowdrop】の店長、雫井(しずくい)ゆきねは、美人な上に、かなりのやり手だと評判。

ちなみに、玲也の母親の大学時代の後輩である。

ここでバイトを始めたのも、そのつながりからだ。