玲也からの反応はない。


優羽は深く息を吸って、もう一度はっきりとした声で言う。



「私は、神田さんのことが好きです。
ずっと前…初めて店に行った時、神田さんは私があんずジャムを気に入ってるってことに気がついてくれた。多分、あの時からずっと、貴方に惹かれていた」



再び、玲也が優羽の隣に腰を下ろす気配がした。

玲也の表情を確認するのが怖くて、下を向いたまましゃべり続ける。



「もちろん、あの店のお菓子は美味しいけど、いつの間にか店に行く一番の理由は貴方になっていた……
でも、私なんかが神田さんと釣り合うはずないし、ずっと、見てるだけで満足だって自分に言い聞かせて…」



最後まで言う前に、フワリと何かに包み込まれるような感覚を覚えた。

優しく、それでいてしっかりと抱きしめられていた。



「え…」


「ごめん。だけど、少しの間でいいからこうさせて。」


「でもっ、人いますよ?」


「分かってる。けど、嬉しすぎて我慢できなかった」