──カランカラン



神田玲也(かんだれいや)のバイト先【Cafe: snowdrop 】の扉がベルの音を立てて開いたのは、日曜日の閉店間際のことだった。



「すみません、まだやっているのかしら?」



声をかけて入ってきたのは、40代くらいの女性だった。

その後ろには娘と思われる、地元の高校の制服を着た少女もいた。
ちなみにその高校は玲也の出身校でもある。

前髪が長めで、少しうつむいているため、顔はよく見えない。




「あと10分ほどで閉店ですので、店内で召し上がって頂くことはできませんが、テイクアウトでしたら承りますよ」



玲也の言葉に、女性は嬉しそうに微笑んで、娘の方を見た。



「ねえ、美味しそうなものあるし、せっかくだから美羽にも何か買ってこうか。
いやー、お母さんこんなところに素敵なカフェがあるなんて知らなかったなー」


「うん…」



楽しそうに話す母親とは対照的に、娘はどこか躊躇っているように見える。