次の瞬間。

オズが、ぱしっ!と私から笛を奪い取った。


(あ…っ!)


何かを言う暇もなく、彼は笛に向かって“問い”を口にする。


「“あの子の居場所を教えてくれ”…っ!」


(…!)


彼は、そのまま笛をくわえる。

そして、勢いよく息を吹き込んだ。


ポォ────♪


「「?!!」」


泉に響く、何ともイラつく間抜けな音。

その音色はリコーダー以外の何物でもない。


ポォー♪ ポォーッ♫


何度吹いても、笛は真実を歌う気配がない。


「まさか、水に濡れたから壊れたの…?!」


私の問いに、笛を持つ彼が呟くように答えた。


「いや、水に濡れたくらいで壊れるわけない。それに、本物の笛は、その証に“魔法陣”が浮かび上がるんだ。…そもそもよく考えたら、レアな本物の笛を、あの犯人が簡単に崖に放り投げるわけないよな…」


(…と、いうことは…?)


彼は、絶望の表情で唇を動かした。


「これは“真実を歌う笛”なんかじゃない。…正真正銘“ただの笛”だ…」