私が彼の名を呼ぶと、ウサギさんはにこりと微笑んだ。


「エラ、会えてよかった。…約一名を除いて、みんな無事みたいだね。」


サクサク、と葉を踏んで歩み寄るウサギさんは、オズへ優しげな視線を向けている。

ウサギさんまでこの森に来ていたなんて、驚きだ。

もしかして、私を探すのを手伝ってくれたのだろうか。

ウサギさんはさらり、と口を開く。


「さぁ、みんな。日が暮れる前に森を出よう。オズくんを早く寝かせないと、風邪で寝込むどころじゃなくなるからね。」


私は、不安げに彼に尋ねる。


「でも、出口への帰り道が分からないよ。…目印の煙は消えちゃったわけだし…」


すると彼は、にこ、と笑って私に答えた。


「だーいじょうぶ!僕が案内をするから。」


(え…?!)


全員が目を見開いた瞬間。

ウサギさんは、ぽぅ…っ!と桜色の瞳を輝かせた。


ザワザワザワッ!!


すると、森の木々はみるみるうちに横にはけ、目の前に人が通れるほどの道が現れる。

ウサギさんの呼吸とともに、葉がざわざわと揺れていた。


「す、すごい…!どうやってやったの…?」


ついウサギさんのシャツを掴むと、彼は、ふっ、と笑いながら答える。


「この森は侵入者を拒むために、複雑な地形になるよう魔法がかけられているだけなんだ。僕には“魔法が効かない”からね。森の魔力を少しいじれば、簡単に帰り道を教えてくれるよ。」