「順番守れなくてごめんね?」


ほんとだよ。


デートだってしてないしさ。


まだ、付き合ったばかりなのに。


「でもキスしたら余計に好きになっただろ? 俺のこと」


完全に芝田のペースなのがいやだ。


だけど芝田とこうしていられることが嬉しい。


意味がわからないくらい、ドキドキしてる。


「手、繋いだまま戻ろっか。教室」

「ぜったいイヤ」


それこそ冷やかしの対象だろうが。


そう思って芝田から手を離したのに。


……もっと繋いでいたかったとか思ってしまう。


「次は薙乃ちゃんが友達に尋問受ける番だ」


女子は恋バナが好きだ。


誰が誰を好きだとか。


誰と誰が別れただとか。


おまけに芝田のこといいって思ってる子は多いから。


「色々言われるんだろうなぁ」


「あーあ。俺って結局どう生きてもモテちゃうんだなぁ」


自分で言うなよ、自分で!!!


「……なにか嫌なこと言われたら言ってよ」

「!」

「お前の友達疑うわけじゃないけど。陰湿なヤツっているから」


やっぱり芝田は、自分の身近な人間が傷つくことを恐れてる。


小学校でなにがあったかはわからない。


だけどこんなに元気そうに見える芝田も、傷を抱えてるってことだけはわかった。


わたしは、そんな芝田の支えになりたい――。