「あれ。芝田、傘持ってきたの?」


芝田の手に握られていたのは大きな黒い傘。


昨日の帰り、あれに一緒に入ったんだ。


あの傘に入ったんだ……。


「今日、また夕立ちくるかもしれないんだってさ」

「そうなのっ……!? 取りに戻る!!」

「戻らなくていーよ」

「え?」

「一緒に使お」

「で、でも。1本だとまた芝田濡れちゃうし……」


風邪ひかなかったかなってちょっと心配したけどピンピンしてる芝田。


「俺は濡れてもいいから一緒に使いたい」

「……っ」


なにも芝田が濡れてしまうことだけが気がかりなわけではない。


……周りの目が、気になる。

芝田は気にならないのかな。


昨日までクラスメイトだったわたし達が恋人になったなんてみんな絶対ビックリするよ?


「ねえ、芝田」

「ん?」

「一緒に登校したら、みんなはどう思うかな」

「そのうち俺らが付き合い始めたと思うんじゃない?」


そう、だよね。

一度や二度なら偶然途中で会ったってこともあるけど続けばそんな風に思われるよね。