「ああ。俺がガキっぽいことしたら、薙乃ちゃんはドン引きしたあと――きまって可愛い顔して笑うんだ。これはもう相思相愛って思ったね」
「はぁ!?」
「好きなんだろ。俺のこと」
「……っ、自惚れないでよ」
「自惚れなもんか。俺が薙乃ちゃんに視線送ってたように。薙乃ちゃんだって俺のことよく見てたし」
「それは……アンタがおかしなことばっかりしてたから……!」
「わざとだよ」
「え?」
「見て欲しかった。俺のこと」
「……バカ……」
「薙乃ちゃん。いま、耳まで赤い」
「ウルサイ」
「……かわいい。可愛すぎて困る」
馬鹿と天才は紙一重なんて言葉もあるけれど。
芝田は、バカでも天才でもなく。
「恋愛なんて暇なヤツがすればいいと思ってたんだけどなぁ」
――狡猾(こうかつ)なヤツだ。
言ってることと考えてることが違う。
怒ってるのに笑ったりしてきたんだ。
なのに、憎めない。
わたしはそんな芝田にとんでもなく魅了されてる。
鳴り止んでくれない心臓。
ずぶ濡れになってる芝田。
黒髪から水滴がしたたり落ちる芝田から目が離せない。
前髪の奥で細めた透き通る瞳に吸い込まれそう。
イジワルに笑う口元を見て更に心拍数があがる。
こんなの。
こんなの。
「認めちゃいなって」
認めざるを得ないよっ……。