「なんか、ごめんね。アンタを……その、責めるようなこと言って」
いくら可愛くても。
付き合うとか付き合わないとか、決めるのは芝田なんだ。
「市川が謝ることねーよ」
「ううん。わたしが口を挟むべきじゃなかった」
「……挟めばいいのに」
「え、なに?」
芝田の声が木々のざわめきにかき消されるくらい小さくて、わたしの耳には届かなかった。
なんかちょっと芝田らしくない。
ゴミを捨て手を洗い教室に戻ってくると
すっかりひとけがなくなっていた。
もうみんな部活に行ったり帰ったりしたあとで、もぬけの殻というわけだ。
ポーン、ポーン……と
窓の外からテニスラケットにボールがぶつかる音が聞こえてきた。
テニスコートでテニス部が練習しているのだろう。
「芝田、それじゃあまた明日――」
「薙乃ちゃん」
「……は?」
なにいきなり名前呼びしてるの。
「俺、薙乃ちゃんに隠してることある」
(隠してる……こと?)
「なに?」
芝田、変わってるからなぁ。
たぶんなに聞いてもわたし、動じないと思う。