「 初めまして、桜木 美奈帆 ( さくらぎ みなほ) ちゃん。」


なんで名前を?



でも、家の中にいるのだからきっと母が招き入れたんだ。


「 ……初め、まして。 」




だったら知らない人であろうと、挨拶しないわけにはいかない。


そう思って、遠慮がちに挨拶を返した。



「 ほら、陸。

陸も挨拶しなさい 」


陸と呼ばれた男の子に話しかける瞬間、

初めて恐々とした表情を浮かべていた男の人が笑顔を見せた。


私より少し身長が低いその子は

男の人の顔を不安そうに見上げ、私の方に腕を突き出した。



「 空井 陸 ( そらい りく)、です。

よろしく……ね? 」


首をコテンと横にして、私の手を優しく握る陸に

私は自然と微笑んでいた。