その言葉にあたしは立ち止まった。


涼太が不思議そうな顔をして振り返る。


「どうした小春?」


「あたし、小春じゃない!」


「なに言ってんだよ」


笑う涼太。


「あたしは心だよ!」


「心って誰?」


「涼太……冗談でしょう?」


「早く行くぞ、小春」


涼太はあたしの手を握りしめる。


その手は次第に黒ずんでいき、ドロリと溶けはじめた。


「いやっ」


咄嗟に手を離そうとするが、液体が絡み付いて離れない。


「どうしたんだよ小春」


そう言って振り向いて涼太の顔の半分が、ドロドロに溶けていた。