あたしはペンチで武人君の前歯を掴んだ。


上の歯だ。


グッと力を込めて、勢いに任せて引き抜いた。


血がほとばしり、武人君の体がビクンッと跳ねる。


同時に黄色い水が足を伝って床へと落ちて行った。


失禁したのだ。


「なにしてんだよお前は!」


ユキエさんが武人君の体を蹴って怒鳴った。


アンモニアと鉄の匂いが混ざり合う。


途端に吐き気が襲ってきて、あたしはペンチを取り落としてしまった。


「後は好きにして」


あたしはユキエさんへ向けてそう言うと、慌てて地下室から逃げたのだった。