なにも言わないあたしを見て、武人君は「この時計、小春に似合うね」と言い、50万円近い腕時計をあたしに買ってくれた。


「小春、今日は体調でも悪い?」


リムジンに戻ってきた時に武人君がそう聞いて来た。


「う、ううん。なんで?」


「なんだかいつもと様子が違うから」


そんなの当たり前だ。


あたしはあんな高級店に入った事なんてないんだから。


小春ちゃんなら、きっと自然にふるまえていたのだろう。


「気のせいだよ」


あたしは精いっぱいの笑顔でそう言った。


「それならいいんだけど」


そう言って、武人君はあたしの手を握りしめて来た。