「何が?課題、忘れたのか?」 「えっ?」 突然の低い声にびっくりして、振り返ると天本くんが上履きを持って立っていた。 「わ、私…?」 「あぁ。千波さんに言ったつもりだけど…」 他に誰がいるんだ?って、こちらを見て首を傾げている。 「…あ。な、何でもないの…独り言だから…」 パチリと目が合った気がして、慌てて目線を下げた。 「そっか。独り言」 カタンとすのこに上履きが落とされる音がして、私もそれを真似るように上履きをすのこの上に置いた。