「………どうしたら」




俺は何も知らなさ過ぎた。
桜のことも柳瀬さんのことも本当は裏の裏の裏ずっと奥深くに何かがあるのに

俺は死んだという事実しか知らなかった。




「なんか言ったら〜美女地蔵〜」



「美穂〜それ褒めてるんだかディスってんのかわかんないよ〜」




放課後、なにか資料があるのではないかと図書館に向かう途中、見覚えのある人達の声が聞こえた。

それは中庭のほうで、俺は足をそっちに向けた。



「ほんと喋らねぇよなぁ」


「最後に喋ったのいつ?」


「わっすれた〜」




そう言って見覚えのある女の肩を強く押す女達。その見覚えのある女はあの若木 菜々だった。それを取り囲むのは隣のクラスの女子。




「…っ」




若木さんは下を向き、強く唇を噛んでいるように見えた。

まるで喋らないようにとしているみたいに。