俺がバス停で待ち伏せていたあの日以降、橘 瑠璃(タチバナ ルリ)は姿を見せなかった。


ニュースで彼女の兄らしき人物がなくなったのは知っていた。

風の噂で彼女は引きこもっていると聞いた。



「…わからねぇな」




橘 瑠璃から貰った白い紙にはいくつかのワードと人物の名前が書かれていた。

ほとんどは聞いたことがなかったが、どうしても信じられない奴がいた。


“浜田 朋也”



俺の代わりにバスケ部のキャプテンをしてくれている俺の唯一の親友。


こいつが何かしら関係している。
本当かなのかわからなかった。



ここ数日は朋也の観察をしたが特に変わった様子なんてなかった。

そしてある日のことだった。

その日は既に橘 瑠璃と会わなくなって一週間は経っていた。





「あ、ごめん」



「ごめんなさい」




廊下で隣のクラスの若木 菜々(ワカギ ナナ)という生徒にぶつかってしまった。

黒髪のストレートロング。
真っ白な肌と少し赤く染まった頬。
美しい顔立ち。

男性にモテないはずはない。

だが、人と話すことがない冷たい女王だとよく言われていた。