「あ、バス来た」




目の前にいつも乗るバスが来た。


児嶋くんは私を先に乗せてくれた。帰りのバスだから意外に人がいたけれども、座ることは出来た。

児嶋くんとはだいぶ離れてしまったけれども。



次のバス停で老人がやってきた。足腰の弱そうな人で座る場所がなさそうだった。





「あの、よければ、座ってください」




私がそう言うと老人はニコッと笑ってありがとうと言ってくれた。

これくらい普通のことだった。

万が一にでも急ブレーキをかけて老人がコケたら大変だ。


老人が椅子に座ると私はその前に立った。





「偉いねぇ。私の孫みたいだよ」



「へぇ!お孫さんっていくつなんですか?」



「今は15になるねぇ。時が経つのは早くて早くて…」



「ほんと、ですよね〜」





自然と盛り上がる老人との会話。

バスの中だからそんなに大きな声を出さないようにそっと話す。