人格交換ガチャ

「ああ。しばらくは…この生活に落ち着いてからじゃないと」



「そうか。大変だな。お前も……」



「バスケ部…しばらく頼んでもいいか?」



「……ああ、当たり前だろ?俺とお前の仲じゃん?」




バスケに集中したい気持ちはあった。だが、俺の周りで人が死んでいく…。

そんな事実を簡単に受け止めて、普通に生活するなんてできなかった。




「あ……」




帰り道のバスで、前に柳瀬さんが席を譲っていた老人がいた。座れる場所がないらしくキョロキョロしていた。

座っている人達はみんな気付かないふりをしているらしく、譲る素振りすらない。




『これくらい、普通のことです!』




譲るという行為を普通だと言える柳瀬さんのこと…すっごく、好きだったのに。



誰か退いてあげないものかと思ってみていたが、誰もそんなことはしなかった。

バスは動き出し、老人がふらふらしている。俺は老人に近づいてニコッと笑った。





「俺に捕まったり、寄りかかったりしていいですよ。大丈夫ですか?」



「え、ええ。ありがとう、大丈夫よ」




だが、やはり心配ではあった。