「あ、柳瀬さん」




目が合うと彼は私の苗字を呼んでくれた。





「え、なんで私の名前…」




「それはクラスメイトですからね。当たり前でしょ?」




爽やかな笑顔で彼は笑う。



「バスだったんだね。柳瀬さん」




ただ単純にイケメンだから好きになったわけじゃない。自分が可愛くないのにイケメンと付き合えるだなんて夢のまた夢。

でも、みんながいつもサボる日直の仕事を最後までやったり、うるさい男子を叱ったり、それでも人気者で…

私は正反対の彼に惹かれていたんだ。




「こ、じまくんは…」



児嶋くんと話す機会があったら聞こうと思っていた質問があった。






「自分のこと、好き?」



「まあ、好き、かな。そんなに嫌いとは思わないかも…。急にどうして?」




「ううん、なんでも、ない」





完璧な彼だもの。嫌う部分がない。
私は真逆。なんとも悲しい話だ。