「私はこの顔になる前、すごくブスで、顔のせいで中学3年間、いじめられてきたわ」




「へぇ?」




「朋也は、別の中学だったけど、こんな私をいつもいつも優しくしてくれていた。高校生になってメイクするようになって…たくさんの、友達ができたの。それでもメイクして偽りの顔を作って友達を作るのはいつも心苦しかった…」




「それで、新しい顔を手に入れた?結局、その顔も作り物でしょ?」






若木さんは苦しそうな顔をした。





「知ってる、わ…。作り物、だってくらい。でもあなたには分からないでしょ?そんな容姿で産まれてきたんですもの。私だってあなたのように産まれてくれば……」




「そんなの親を恨んでくれよ。朋也と俺のあいだにはなんの関係もないね」





俺は若木さんに背を向けるとまた歩き出した。




「あなたは!なんにも分かってない!人の気持ち!自分が一番可愛いから!自分が一番大事だから!他人にも興味が無い!自分を中心に考えないで!」






若木さんの大声が響いたが、俺の心には一切、届かなかった。