「で、その肝心の彼はどういう人なの?」

「お、何ですか意外と興味ある?」

「いや、ここまできたら接待の場の話のネタにでもしようと思って。こんなバカな女がいたんですよ〜って。絶対盛り上がるだろ」

「あなた友達いないでしょう」


ケッ、とお互い剣呑な目線を送り合う。

まぁ、彼は話を聞いてくれている側なので生意気な態度も多めに見よう。


「タツヤって名前です、彼」

「俺その名前知っちゃっていいの」

「世の中にタツヤが何人いると思ってるんですか」


それもそうか、と彼はナッツをカリッと噛む。
その目が話の続きを促している。

で、どんな奴なの?

みのりはグラスに口付けながら考えた。
タツヤがどんな人か。
どんなって、一言で表せる人なんてこの世にいないと思うけど、そうだなぁ。


タツヤは、


「ポリアンナ症候群ですね」



彼の目が大きく見開かれる。
見開かれた焦げ茶色の目の中で、間接照明の光が揺れている。
そんなに目の表面積が大きくて、ドライアイにならないのだろうか。

ぼんやりとした灯りの中でみのりは思った。