私の愛しいポリアンナ


「私と逆ですね」

「逆?」

「私は、一週間くらい放置した床を雑巾がけして、こんもり埃がついてるのを見るのが好きなんですよね」

そう、いい笑顔でのたまった。
どんな趣味してんだあんた、と思ったが秋は「そうか」とだけ返した。

「快感じゃないですか?こう、生きてるだけでこんなに汚れてくんだって実感して」

「悪いがその性癖はわからん」

1日に髪の毛何本抜けるか知ってます?70本抜けるらしいですよ。とみのりは勝手に話し続ける。
話しかけなきゃよかった、と秋は頬杖をついて思った。
このダイニングテーブルもそろそろ消毒するかな、と思う。

「生きものって臭いし汚いんですよね」

ウンウンと頷きながらみのりは自己完結している。
秋はカップを持ち上げコーヒーを口に含む。
みのりが入れたコーヒーは美味しいとは言えないが、別段まずくはない。
お湯は真ん中から淹れろといったのに、また忘れたのだろう。
だが、そんな失敗も「まぁ、みのりだしいいか」と思えるのである。
別に死ぬわけでもないし、そこまでコーヒーにこだわりもない。
自分を知ってほしいとも思わないし、嫌われてもいいやという間柄だから、この生活はうまくいっているのだろうと秋は分析している。