みのりが秋の家に居候し始めてから、ゆうに一週間がたった。
結局、秋はみのりを追い出さなかった。
自分が「ここに住め」と命令したのだし、酔っていたから帰れというのも酷いしな、と秋が判断したのだ。
男たるもの、自分の言動に責任を持たねば。
「設楽さん、ごま油買ってきてください」
決算報告をまとめていたら、みのりにそう声をかけられた。
秋はデスクのパソコンをスリープモードにして腰をあげる。
マンションを降りた近場にスーパーがある。
値段が高いが、安い場所に行くのもめんどくさいからそこでいいだろう。
2人での生活は、特に問題もなく過ぎていった。
驚いたことに、みのりは秋の生活にあっさり馴染んだ。
靴下の干し方で少し揉めるなどのささいな言い合いはあったが、ストレスを感じるほどの衝突はない。
朝起きれば勝手にシソを収穫するみのり。
朝食は基本自分の分を作ってムシャムシャ食べ始めるが、気が向けば秋の分も作ってくれることがある。
気づいた方が掃除をし、気づいた方が洗濯物を洗い、干すといった具合だった。
秋は風呂は綺麗にしておきたいタチなので、よく風呂掃除をする。
それに気づいたみのりが「私も何かしよう」といったことを考え、よくリビングに掃除機をかけている。
それと、バルコニーがお気に入りなのかみのりはよくそこを掃除する。
いつの間にかシソとトマトの水やりはみのりがやるようになっていた。


