私の愛しいポリアンナ







「あの、私と少し話してくれませんか?友達にここの人と話すよう言われてて」


隣のよしみで、と一応お願いしてみる。
まぁ、彼のこの反応から断られるだろうなと私は踏んでいたのだが。
どうせ「嫌です」とか一刀両断されるのがオチだ。

けれど、意外にも彼は面倒くさそうな顔をしながらも了承してくれた。


「あぁ、まぁ、いいですよ。でも俺、いろいろ聞かれるの嫌いなんで質問はしないでね」

「おっ、いいんですか」

「断られると思ってた?」

「はい」


なんとなく、この人は私のことを苦手に思っているように感じたのだが。
了承してくれるなんて、どんな酔狂か。

スクリュードライバーを飲みながら彼は目をこちらに向ける。
その流し目がいかにも艶っぽい男で、ananの表紙みたいだな、と思った。


「んー、質問なしで話ですか。なんでしょう、夜景が綺麗ですね?とかから始めればいいんですかね」

「普通に、酒がうまいとかでいいんじゃない?」

「ここっておつまみあります?」

「ナッツでも頼めば」


キャッチボールになりきらないような会話。
マオちゃんは、「ここにいる人たちは勢いがある」と言っていたけど、隣の彼は年の割に落ち着いている。
むしろ勢いなんてまるでない、大樹のような凪いだ感じだ。

さっきからお酒を飲んでいても全然美味しそうじゃないし。
楽しんでいるという雰囲気を出そうともしない。
なんというか。