私の愛しいポリアンナ



そうして数日後。
驚くべき行動力を持って、秋は本当にみのりと会社の部下のお見合いを決行したのだった。
お見合いと言っても堅苦しいものではなく、本当に秋の紹介で二人をそこそこ小洒落たカフェで話をさせただけだが。
ちなみに実家からは「人にお節介焼く前に自分の結婚のことを考えな!」と一喝されてしまった。
まぁそんなことはどうでもいい。
問題なのは見合いの結果だ。

生意気にも、前回会った時からみのりは秋からの電話にはでなくなった。
しっかりと見合いの予定もメールしておいたというのに、返信もよこさない。
いい度胸だ、と煽られた秋はみのりの仕事場に突撃した。
あっさりみのりが出てきたのは言うまでもない。
同僚に騒がれるのは彼女も嫌なのだろう。

「結構前から、友人と話せてないんですよ」としょんぼりこぼされたが、俺の知ったことではない。
女同士のアレコレに男が入る余地はないのだ。
そこで切れたらそこまでの縁だったというだけの話だろう。
秋は「あっそ」とだけ返し、みのりを乗せたビートルを発進させた。
みのりがとっても不細工な顔で睨んできていたが、スルーだ。
そしてそのまま見合いの場に直行。

相手は26歳の若手だが、なかなか気がきく男だった。
実はこの男は秋の商売敵でもあったので、あまり褒めることは言いたくない。
秋の広告会社のライバル会社の営業エース。
何度か出し抜けれたことがあり悔しい思いをした。
しかしそのすばらしい営業手腕をなんとか盗もうと酒を交わすうちに、なんやかんやで仲良くなってしまったのだ。
仕事上では負けたくないライバルの一人。
しかしプライベートでは気が合うという稀有な人材。
元彼女に「あんたら付き合えば?」とさえ言わしめたほどの仲の良さだ。
そんないい男と話す場を設けてやったのだから、絶対成功させろよ、と秋は二人の間に座りながら念を送る。