夕日が沈むころまで屋上にいた。

もう、今日の演劇部には顔出せない。


すると、携帯電話が鳴った。


「もしもし?」

「あ、菜美さん!
よかった…」

電話は小野くんからだった。

「菜美さんどこにいます?
もしもし?

菜美さん?…」


私の名前を何度も呼ぶ小野くんの声が
安心して苦しくて…涙が出てきた。

「ご、ごめんね…」

「え?…

あ、中村先輩!待って!!」

小野くんに代わり中村先輩が電話に出た。

「小川さん、今どこいる?」

「今ですか?
今は…
屋上ですが…」

「わかった。」

そう言い電話は切れた。




しばらくすると、小野くんが屋上来てくれた。


「菜美さん!!」

「ごめんね、今日行けなくて…」

「今日は衣装を着て1回通しただけなので大丈夫です!

それより、どうしたんです?」


話せるわけ無かった。

あなたが誰かに取られるかもしれない恐怖があって、涙が止まらないなんて



言えなかった。


黙る私に小野くんがカバンからゴソゴソ何かを取り出した。


「菜美さん、どうぞ。」

小野くんの手には飴が1つ。

「無理して笑わなくていいです。
泣きたい時は泣いていいんです。

僕がそばにいますから。」

そう言い大きく手を広げてくれた小野くん。



私は小野くんの胸に飛び込み
校庭に響くかもしれないくらい
泣いた。



泣いて、泣いて、泣いた。


そして、決めた。


私も文化祭の日に告白する。