「恋愛は自由なんだ!!マルコ!お前もわかるだろ?!」

「分からない…僕は!!僕は!!!

ジェシカ…アリア…
どちらも、大切に思う…

でも、でもっ!!!

僕は!!!」


「はい、カーッと!!

ちょっとちょっと!マルコ、気合い入れすぎ!」

「あ、はい、すみません!!」

「では、もう一度同じところからお願いします。

菜美さんも何かあれば言っていいですからね!」


2日目、最後まで通しでやることを目標にしているがなかなか進まない。

小野くんに感想を言ってもいいと言われたが、マルコの気持ちが分かりすぎてそれどころではなかった。


「ちょっと休憩しよー」
中村先輩が、みんなに声をかけた。

みんな、朝から全力演技をしていて
疲れていた。


「菜美ちゃんと翼も少し休みな」

薫さんに2人して頭をぽんぽんとされた。
イケメンねぇさん、かっこいいなぁと思った。


「中村ー
次のシーンって脚立使うよね?」

「あ、そうだな。

おーい!裏方チームー」

少し離れたところにいた裏方さんたちに声をかけた。

「次のシーンで脚立使うから、準備お願いー」

「はーい」

裏方さんの1人が脚立をステージまで持ってきてくれた。


「じゃあ、使うのは2年のやつだよな。
自分で受け取れよー」


裏方さんが胸くらいまであるステージまで脚立を持ち上げた。
それを2年生が受け取ろうとしてた。


その瞬間……

「あっ…」

ガッシャーン!





私は一部始終を目撃した。

2年生が脚立を受け取ろうとした瞬間、足を滑らしてステージから落下してしまった。


「おい!!しっかりしろ!!!!」

「私、救急車よぶ!」
薫さんは急いで電話して
周りは慌ただしくなった。


打ちどころが悪かった。
頭から血が流れているのを見て
私はその場で座り込んでしまった。


「菜美さん、大丈夫?!

菜美さ…」


恐怖ときっと、医者になりたいと言ってた自分が何もできない不甲斐なさに泣いてしまった。

小野くんは現場が見えないように
私を優しく抱きしめてくれた。


「菜美さんは残念な方じゃないです。
全然、弱くないです。

大丈夫ですよ。
僕がそばにいます。」


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2日目の練習は中止になり
中村先輩と薫さんは2年生の付き添いで病院に向かった。


みんなは2年生の容態を心配しながら
ホールに残っていた。


「はぁ…」
私はため息をついた。
医者になりたいと夢を抱いていたのに、何も出来ない。
ただ、座ってしまった。


でも…

隣を見ると小野くんが脚本とにらめっこしながら、ずっと私のそばにいる。

混乱してたけど、小野くんに優しく抱きしめられた時は


すごく、すごく、暖かった。


あぁ、やっぱり
小野くんが好きだ。