今回の合宿の日程はずっと稽古。
ひとまず、文化祭に向けて練習を重ねるのみだった。

その間、役がない裏方さんは必要な舞台で使う小物や初日に計る衣装の作成が合宿から始まる。
ホールは舞台もあり、作業できるスペースもあるのでどちらも、進行具合を把握できる。
また、ホールとロッジは渡り廊下で繋がっているので行き来が何度もできる。

ロッジは食事、お風呂、荷物置き場になっていた。荷物はロッジのひとつの部屋に学年ごとに置き、必ずリーダーが鍵を閉める。

私も二年の部屋に荷物を置いた。


「菜美さん…あの…」

「ちょっと待って!私が先。」

小野くんが何かを言おうとしたが、まずは伝えなきゃいけないことがある。

私が先に伝えなきゃ。

「ごめんなさい。
ずっと、元気なくて私の機嫌に振り回して
気まずい感じになってしまって…

でも、私は道流ちゃんが苦手です。
小野くんにとっては大切ないとこかもしれない、けど、私は道流ちゃんが苦手で…」

「菜美さん、顔を上げてください。」

顔を上げるとにっこり笑う小野くんがいた。

「僕は健気で笑ってる菜美さんが…いいです!道流のことは気にしないでください。

僕は今のままの菜美さんが…

いいから…」



どうして、この人はこんなにも優しいの…

ひさしぶりに、照れてる小野くんを見て
涙が溢れた。


小野くん…

ありがとう…