今日は4シーンだけだった。
なかなか進まないんだなぁ…と思った。
練習が終わり後片付けが始まった。
私は小野くんと入口付近の作業部屋で明日の練習で使えそうな小道具を探していた。
「小川さん、小野、おつかれ」
「あ、中村先輩、お疲れ様です!」
中村先輩が声かけてくれた。
その先輩の後には薫さんがいた。
「翼たちまだ帰らないのー?」
「え?」
「もう、みんな帰ったよー」
「あ、じゃあ…僕達もそろそろ帰りましょうか…」
「そうだね」
私と小野くんは帰りの支度をし始めた。
あっという間の1日に軽くため息ついた。
「菜美さん、疲れましたよね?…」
「あ、大丈夫よ!
なんか、あっという間だったからさこの充実感がすごく気持ちよくてね、嬉しいんだ。」
「よし!みんなで、ご飯食べ行こ!」
薫さんが笑顔で言った。
「みんなって、俺もか?」
「はぁ?!なんで中村抜きで行くのよ!
誰が『菜美ちゃん歓迎会』のお金払うの?」
薫さんはニヤニヤしながら中村先輩の顔を覗き込んだ。
中村先輩は険しい顔からため息をついた。
「わかったよ…」
「よーし、みんなで帰りましょ」
私は嬉しかった。
私の歓迎会をしてくれることはもちろんだけど、中村先輩と一緒に帰れることが…
小野くんがこっそり、良かったですねと言ってくれた。
私は笑顔で大きく頷いた。
ほんとに、嬉しい
中村先輩と一緒にいれる。
好きな人と一緒にいれる。
ん?
私は好きな人という言葉にこの頃から
引っかかるようになった。