朗読は感情を入れず、淡々と役者さんが読む。裏方さんはその間小道具の準備を始めていた。
一番前の席にいる、小野くんは朗読を聞きながらなにやら、たくさん書いている。


ひと区切りする度に、中村先輩が小野くんの所に行き相談している。おそらく、脚本家の小野くんと監督兼役者の中村先輩で今後の進行を決めている感じだった。



中村先輩はかっこいいし、素敵なのは知っていたけど…


小野くんってあんなに頼もしかったかな?
そう思うくらい、真剣になってる小野くんもかっこよかった。



そんな二人を見てると、小野くんが後ろにいる私の方を振り返りこっちに向かって来た。

「どうしたの?」

小野くんがモジモジと答えた

「もうすぐ、朗読が終わるんですけど…

菜美さん、僕の隣でお手伝いしてくれませんか?!」

恥ずかしさからか、勢いよく言葉が出てた。


「私…まだここに居ていいの?」

小野くんの手伝いよりも、中村先輩をまだ見れる、まだ話せるチャンスがある、そんなことを期待していた。