月日は流れ、高校三年生になった。


「完全装備だな」


家の前で待ってくれていた蔵王さんがニッと笑った。


「うん。寒いのは苦手なんだ……」


分厚いコートにネックウォーマー、手袋、イヤーマフラーと、寒さには一切触れさせない格好をしていた。


「母校でのライブだからか気合入ってるな」


「そうかな?」


「まあそこまで固くならなくてもいい。いつも通り楽しもう」


肩をぱしぱし叩かれ、力が入っていたことに気づく。
中学校の軽音楽部は存続の危機に立っているらしい。現部長から、幽霊部員が多く、部活自体影が薄くなったと聞いている。


部費で買った楽器があるものの、数が足らない。
教えられる人もいないので文化祭の発表も途切れているらしい。
CDを聴いて感想や気付いたことをレポートにまとめ、部室の前に貼るのが活動に変わっていた。


「もしかしたら弾くことの楽しさに目覚める人もいるかもしれない。……今日で皆を元気付けられるといいな!」


蔵王さんは拳を握りしめ、目を輝かせた。