「あいつ、休み時間になったら何か食ってるよな」


ある男子が、グミをつまむ始桐 李(しきり すもも)を見て言った。


「今日はグミか。昨日はマカロンとチョコレートとドライマンゴーやったな」


「何でそんな覚えてんの?でも、ほんとに食べてばっかりだよね」


話していた女子が、李の席に向かう。


「休み時間になったらおやつ食べてるよな?そんなにお腹空く?」


「お腹が空くと言うより、食べるのが好きなの」


そう答えた後、またグミを口に入れた。


「へー。でも、そんなに太ってへんな。運動してるん?」


李はグミを飲み込んだ後答える。


「してないよ。でも、普通の食事には気を付けてる」


今度はグミの袋に手を突っ込まない。
まだ質問は続くと思っている様だ。


「グミちゃんは好きなお菓子ってやっぱりグミ?あっ、グミちゃんって呼んでいい?」


女子はぐいぐい近づいてくる。すると、李は少し困った表情になる。
口に指を当て、少し考えた後、微笑んでこう言った。


「グミは好きだけど、グミちゃんだと共食いって言われちゃう。メレンダがいい」


メレンダ。本名からはかけ離れたあだ名の、由来を聞いたが、李は教えなかった。


そして、いつの間にかメレンダが定着していた。