月が綺麗ですね

頭をぐしゃぐしゃと掻きたい衝動を抑えながら、思わず天を仰ぐ。


「そんなにお困りにならないで下さい」

私の気持ちを察したように、従業員さんは苦笑いをする。

「これも、六ツ島さまのご命令です」

「...は...あ」


言われてみれはその通りだ。

『座ってお茶を飲み、俺を見るな』

副社長は間接的にそう言っているのだ。


「頂きます」

私は観念したようにソファーに座ると、従業員さんも笑顔で出て行った。


「これは...」


甘酸っぱいアプリコットとローズの上品な香りが嗅覚を刺激する。


「...ローズティー」


上質な空間に上質なお茶。