成田空港への到着を２便早めて正解だった。

花音との再会。

エスカレーターでの一瞬に、肝を冷やしたがニューヨークで多少なりとも筋トレで鍛えていて良かったと、胸を撫で下ろした。

前髪を下ろし鍔のある帽子を目深に被り、シャツのボタンを掛け違えたり、チノパンの裾を足首の上まで折り返したりし、ワザとダサく見えるようにした俺。

LIBERTEのボーカル綿貫和音だと気づくのは花音くらいだと思った、俺自身の読みはまんざらではなかったなと思う。

俺はニューヨークでの喉の治療とリハビリ、スパルタ式の厳しいボイストレーニングが功を奏して何とか元の歌声を取り戻した。

だが、期待していた吃音克服は叶わなかった。

吃音と診断されて以来、花音に出会うまで、長年ずっと歌う以外は筆談と手話で暮らしてきた。