鋭い視線が突き刺さるようで痛かったけれど、和音くんが留学している間もずっと手話を習っていて良かったと思った。

翌日、登校すると教室内は和音くんの話題で盛り上がっていた。

山下公園で夕陽に照らされ歌う和音くんの動画を観ながら、LIBERTEの解散説が真実味のある話なんだと口々に噂していた。

「カナリア」を歌う和音くんの哀愁漂う歌声の動画、アクセス数がすごい勢いで増えていく。

あたしは和音くんが今でも人気バンドのボーカルなんだと、思い知らされた。

空港で、あたしを抱きしめて吃音しながら「花音」と、何度も呼んでくれた和音くん。

和音くんの抱きしめてくれた温もりが、まだ鮮明に残っているのに、和音くんが遠い存在に感じられる。

「Alice」と思い切り声に出して、和音くんを励ましたいのに、和音くんの放つLIBERTEのボーカル綿貫和音のオーラが眩しくて、気持ちが萎縮してしまう。