「なぁ、この子見たことある?」


ソファに座ってテレビを見ていた両親にぶしつけに質問する。


「なぁに、この変な絵」


俺の絵を見た瞬間プッと笑いだす母親。


「何の絵だ? ピカソの模写か? いやぁ、大したもんだな」


見当違いに褒めはじめる父親。


一生懸命描き直したかいは全くなかったようだ。


俺は肩を落とし、絵をグシャグシャに丸めるとゴミ箱へ捨てた。


「じゃぁちょっと質問。最近、近所に引っ越してきた家族っている?」


「何言ってるの? いないわよそんな人」


「だよな。見たことのない小さな女の子が歩いてたことは?」


「良真、昨日のショックで熱でも出たんじゃないのか?」


心配そうに俺の顔を覗き込んでくる父親。


「いや、覚えがないならいいんだ。ごめん、俺疲れてるみたいだから少し寝るよ」
「しっかり寝て、しっかりしなさいよ」


母親の声を背中に聞きながら、俺はリビングを出たのだった。