「そんなにキスされたのが嫌なのか? もしかしてお前、男好きか?」


「そんなわけないだろうが!」


俺はちゃんと風花が好きだ!


と、言いかけて慌てて口を閉じた。


先輩からのキスは、不覚にも一瞬ドキッとしてしまったものの、やはり違う。


一瞬惹かれてしまったものの、違うんだ。


先輩のキスは相手なんて誰でもいい。


そんな感じのキスだった。


俺は誰でもいいキスの相手として偶然選ばれて、大切なファーストキスを奪われたんだ。


そう思うと腹が立った。


いくら綺麗な先輩相手でも、むかついた。


歩道に転がっていた石を思いっきり蹴りあげる。


石は大きく空中を舞い、カンッと軽い音を立ててコンクリートの上に落ちた。


「えっ」


瞬間、俺と城は立ち止まった。